
目次
20.「自宅待機」・「就業拒否」に関する対応
参考就業規則条文
第○○条(自宅待機・就業拒否)
この規則に違反する行為があったと疑われる場合で、調査・処分決定までの前置調査
として必要があると認められる場合には、会社は、従業員に対し自宅待機を命じること
がある。自宅待機を命じられた者は、自宅待機していること自体が労務の提供であり、
勤務時間中自宅に待機し、会社が出社を求めた場合には、直ちにこれに応じられるよう態
勢をとるものとし、正当な理由なくこれを拒否することはできない。また、会社は従業員
が自宅で待機している間、通常の賃金を支払うものとする。
2.前項にかかわらず、従業員の行為が懲戒解雇事由に該当し、若しくはそのおそれがある
場合又は不正行為に再発若しくは証拠隠滅のおそれがある場合において、会社は調査及び
審議が終了するまでに間、就業を拒否することがある。この場合、その期間中は賃金を支
給しない。
【対応のポイント】
①自宅待機と就業拒否の区分
ア)自宅待機→処分決定までの前置措置(業務命令)
イ)就業拒否→会社の労務受領拒否
②自宅待機・就業拒否を規定する根拠を記載しましょう。
ア)自宅待機・就業拒否の期間の賃金の取扱いについて規定しましょう。
自宅待機を命じた社員に対する給与、休業補償等賃金は労働者の労働の対償として
支払われるものですので(労働基準法第11条)、労働者が労務の提供をしないとき
(休業)は、使用者は原則として賃金を支払う必要はありません。
ただ、その休業が使用者の責に帰すべき事由によるときは、賃金等支払いの問題が
生じます。
労働者が使用者の責に帰すべき事由で休業したときには、民法536条第2項と
労働基準法第26条が問題となります。
民法536条第2項は、「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行するこ
とができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない」と定めてい
ます。
これを労働契約に当てはめますと、労務の提供は労働者の債務ですので、「使用者
(債権者)に責めに帰すべき事由によって労務の提供をすることができなくなったとき
は、労働者(債務者)は、賃金(反対給付)を受ける権利を失わない」ということにな
ります。
他方、労働基準法第26条は、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合において、
使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わな
ければならない」と定めています。
この民法第536条第2項と労働基準法第26条の関係について、最高裁は、民法第536条
第2項により労働者が使用者に対する賃金請求権を失わない場合には、労働基準法第26条
の休業手当請求権と賃金請求権は競合すると判断しています。
そうしますと、自宅待機が「使用者の責めに帰すべき事由」に該当するかが問題になりますが、
自宅待機が相当性を欠く場合には、使用者の責めに帰すべき事由があると考えられます。
このような場合には、使用者は、自宅待機を命じた労働者に対して、賃金全額を支払わなければ
なりません。
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投稿者のプロフィール

- 社会保険労務士
-
500社以上の就業規則を診断してきた社労士です。
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