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従業員が会社に損害を与えた場合

労務管理

従業員が会社に損害を与えた場合

2024年10月18日
従業員が会社に損害を与えた場合に、どのような責任が発生し、会社が従業員に対して損害賠償を請求できるかについて説明しています。以下に要点をわかりやすく整理します。

1. 従業員の行為が会社に損害を与える例
記事では、従業員が会社に損害を与える典型的な例をいくつか挙げています。これには、以下のようなものがあります。

社用車で交通事故を起こす
貸与されたPCや携帯を紛失する
会社の預金を横領する
会社が管理する個人情報を第三者に売却し、会社が損害賠償を行わなければならなくなる
不適切な営業活動によって契約を取り消される
監督を怠り、誤った仕様で建物を建築してしまう
決裁を受けずに取引を行い、売掛金の回収ができなくなる

2. 従業員に損害賠償請求ができる場合
会社が従業員に対して損害賠償を請求できるかどうかについて、2つの問題点があります。

責任の有無:従業員に損害賠償を請求できるのか。
賠償額の範囲:全額の賠償が認められるか。

3. 責任の追及
従業員が会社に損害を与えた場合、損害賠償責任が発生する可能性があります。これは、民法に基づく債務不履行や不法行為の責任です。例えば、従業員が交通事故を起こして第三者に損害を与えた場合、その行為が職務に関連していれば、会社も第三者に対する損害賠償責任を負うことがあります(民法715条)。この場合、会社は従業員に求償請求(損害の一部を返してもらう請求)を行うことができます。

ただし、従業員への賠償請求は制限されることが多く、特に従業員の行為が重大な過失や故意でない場合は、請求が認められないこともあります。

4. 管理体制の問題
会社側にも管理責任がある場合、従業員に損害賠償を請求するのは難しくなります。例えば、会社が従業員に過重労働を課していたり、適切な指導が行われていなかった場合です。

逆に、会社が適切なマニュアルや研修を提供していたにもかかわらず、従業員がそれを無視して損害を与えた場合には、従業員の責任が重くなる可能性があります。

5. 賠償額の減額
仮に従業員に損害賠償責任があると認められても、全額を賠償させることは難しい場合が多いです。これは、信義則(民法1条2項)に基づき、会社と従業員の経済力の差や公平な損害分担の観点から、賠償額が減額されることがあるからです。

また、従業員の給与から損害賠償額を勝手に差し引くことは、労働基準法に違反します。従業員が明示的に同意した場合に限り、相殺が可能ですが、その同意が自由な意思に基づいていることを裁判で証明するのは難しいです。

6. 過去の裁判例
過去の裁判例では、従業員に対する賠償額が大幅に減額されることがよくあります。以下の例が挙げられています:

10分の1に減額:従業員が内規違反の貸付を行い損害を生じたが、会社の厳しい営業目標が考慮されました。
2分の1に減額:中古車販売会社の店長が取引先に騙されて損害を生じたが、重過失があったものの賠償額は半分に制限されました。
4分の1に減額:従業員の過失により売掛金回収の損害が発生したが、過重労働があったことが考慮されました。
全額賠償:従業員が故意に会社に損害を与えた場合には、全額の賠償が認められた例もあります。

7. 会社の対策
従業員に損害賠償請求を行うには、会社側の管理体制や対策も重要です。ミスが起こらないような体制を構築し、万が一の損害に備えて損害保険に加入することも推奨されています。また、法的問題が発生した際は、専門家に相談することが不可欠です。

全体として、会社が従業員に対して損害賠償請求を行う場合、従業員の過失や故意、会社の管理体制が重要な要素となり、賠償額が大きく減額されることがあることを理解しておく必要があります。
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