厚生労働省は、労働時間の「丸め処理」(端数処理)について新しいパンフレットを発表し、労働基準法(労基法)違反につながる処理方法に関する注意喚起を行っています。具体的には、一定の労働時間に満たない端数を切り捨てて、その分の賃金を支払わない行為が法に違反する可能性があるとしています。
労働時間の「丸め処理」とは?
「丸め処理」とは、労働時間を計算する際に、労働時間の端数を一定の基準に基づいて切り捨てたり、切り上げたりすることを指します。たとえば、1日の時間外労働のうち15分未満を「一律に切り捨てる」場合、それに相当する分の賃金が支払われません。このような「丸め処理」が日常的に行われると、労働者が働いた分の労働時間が反映されず、結果として賃金の未払いが発生する恐れがあります。
厚労省の通達の内容
厚労省は、労働時間の端数処理について、以下のような基準を示しています。
端数処理の対象:1ヶ月における時間外労働、休日労働、深夜業のそれぞれの合計についての端数処理を対象とする。
許容される端数処理:1時間未満の端数がある場合、30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げる処理は法違反として扱わない。
労働者に不利にならないこと:端数処理は、事務処理の簡便化が目的であり、労働者に不利益を与えない範囲でのみ許容されています。例えば、「30分未満は切り捨てるが、30分以上は1分単位で支払う」処理は労基法違反とみなされる可能性があります。
違反事例
パンフレットでは、労基法違反とされる具体的な処理方法の例として、次の3つを挙げています。
一律の切り捨て
勤怠管理システムの端数処理機能で、1日の時間外労働のうち15分に満たない部分を一律に切り捨て、その分の残業代を支払わないケース。
この処理により、働いた時間がすべて計上されないため、未払い賃金が発生します。
残業申請の30分単位の指示
残業申請を30分単位で行うよう指示し、30分未満の時間外労働については申請を認めず、その分の賃金を支払わないケース。
例えば、20分の残業が発生しても賃金が支払われないため、労働者が働いた時間に対する賃金が適切に支払われていません。
タイムカード打刻前の労働時間の無視
タイムカード打刻前に行う制服への着替え、清掃、朝礼などの作業を労働時間として取り扱わないケース。
始業前の準備作業も労働時間に含まれますが、これを認めないことで実際に働いた分の賃金が支払われない状態が発生します。
注意点
厚生労働省は、労働時間の端数処理が行われる場合でも、労働者が働いた時間に見合った賃金が適正に支払われることが大前提としています。1日の労働時間についての「切り上げ処理」は問題ありませんが、逆に一定時間未満の時間を切り捨てる処理は違反にあたる可能性があります。このパンフレットによる注意喚起により、企業は端数処理の運用方法を見直し、労働者に不利とならないよう配慮することが求められています。