賞与支給における「在籍要件」とは?
**「在籍要件」**とは、賞与を支給する際に、支給日現在に従業員が在籍していることを条件とする取り決めです。この要件を満たさない従業員、例えば、賞与支給日前に退職した場合は、支給対象から外れることになります。
在籍要件の具体例
たとえば、次のようなケースで「在籍要件」が関係します:
賞与支給日:7月10日
7月9日に退職した社員 → 賞与は支給されない。
7月10日以降も在籍している社員 → 賞与が支給される。
在籍要件を設ける理由
企業が在籍要件を設ける主な理由は次のとおりです:
勤労意欲の向上
→ 支給日まで在籍してもらうことで離職を防ぎ、安定的な雇用を確保する。
運用の簡便化
→ 在籍状況を基準とすることで、支給対象者を簡単に確定できる。
在籍要件の注意点
在籍要件を設ける場合、労働契約や就業規則に明確に記載しておくことが必要です。曖昧な状態ではトラブルの原因になることがあります。
就業規則や契約書での記載例:
賞与は、賞与支給日に在籍している従業員を支給対象とする。ただし、業績等により不支給となる場合がある。
在籍要件に関するトラブルとその対策
トラブルの例
退職予定者とのトラブル
退職予定者が「退職日を賞与支給日の後に変更するよう依頼」するケースや、「賞与は勤務した期間に対するものである」と主張するケース。
対策
在籍要件の明文化
賞与支給条件を就業規則や労働契約書に明確に記載し、従業員に説明する。
賞与算定期間の明確化
賞与の対象となる業績や評価期間を定め、その期間の勤務状況に応じて支給額を決定していることを伝える。
退職者への対応ポリシーの検討
在籍要件を厳格に適用するか、特例として一部支給する場合の基準を設定。
法的な視点での確認
賞与に在籍要件を設けること自体は法的に問題ありません。ただし、以下の点に注意してください:
支給対象者に合理性があること
→ 支給日だけを基準にすることで、対象者の公平性が欠ける場合、トラブルになる可能性があります。
退職者への対応
→ 退職理由が会社都合(例:解雇や会社の倒産など)である場合、在籍要件を厳格に適用すると不公平だとみなされる可能性があります。
判例からのポイント
賞与に関する「在籍要件」の妥当性が争われた裁判例があります。
判例例:賞与と在籍要件に関する判断
東京地裁の判例(平成25年3月):
賞与の支給基準が就業規則で明確に規定されており、支給日に在籍していることが条件とされていた場合、在籍要件は有効と判断されました。
このように、就業規則や労働契約に明示されていれば、原則として在籍要件は有効とされるケースが多いです。
実務的なアドバイス
就業規則の見直し
在籍要件を適切に明記し、賞与支給ルールを従業員に周知する。
退職者への対応ポリシーの明確化
特例的に退職者へ一部支給する場合の基準(例:勤務期間に応じた割合)をあらかじめ決めておく。
柔軟な運用の検討
支給基準を「支給日」ではなく「算定期間の在籍状況」に基づいて判断する方法もあります。
必要に応じて、賞与の支給ルールやトラブルの未然防止策を具体的にサポートできますので、詳しいご相談があればお知らせください!
賞与支給全般についてのご相談・お問合せ先
赤津社会保険労務士事務所
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