「退職勧奨」とは何か、その違法性や適法性について、具体例や判例を交えて解説しています。以下にわかりやすくまとめます。
1. 退職勧奨とは?
退職勧奨は、会社が従業員に対し、退職を促す活動を指します。従業員との合意に基づき雇用契約を終了させるための手続きであり、「解雇」とは異なります。
解雇との違い
退職勧奨:会社が従業員を説得し、従業員の同意を得て退職を進めること。
解雇:会社が従業員の同意を得ずに、一方的に雇用契約を終了させること。
2. 退職勧奨を行う条件
法律上、退職勧奨を行うこと自体は違法ではなく、特別な条件は必要ありません。ただし、男女雇用機会均等法に基づき、性別による差別的な退職勧奨は禁止されています。
適法性の根拠(住友林業事件)
裁判例では、以下の判断が示されています(平成11年7月19日、大阪地方裁判所決定):
長期間業績がない従業員に対する退職勧奨は企業として当然の措置である。
面談を重ねた結果、退職勧奨に至るのはやむを得ない。
このように、裁判所も正当な理由と手続きがあれば退職勧奨を認めています。
3. 適切な退職勧奨の実施
退職勧奨は、適切な方法で行う必要があります。不適切な退職勧奨は違法と評価される可能性があるため注意が必要です。
不適切なケース
メンタルヘルス不調の従業員への退職勧奨
治療中で業務に支障がない場合、退職勧奨は違法とされるリスクがあります。
例:中倉陸運事件(京都地方裁判所、令和5年3月9日判決)
休職の可能性を告げずに退職勧奨
私傷病休職制度が利用可能な場合、これを案内せず退職を進めることは不適切。
例:栃木県事件(宇都宮地方裁判所、令和5年3月29日判決)
性別による差別的な退職勧奨
人員削減時に特定の性別のみを対象とする退職勧奨は違法。
4. 注意点
退職勧奨を行う際は、対象者の状況を十分考慮し、法的リスクを避けることが重要です。
メンタルヘルス不調の従業員や性別差別の問題が絡む場合は、慎重な対応が求められます。
裁判例や法律を交えながら退職勧奨の適法性について,適切な対応を心がけることで、トラブルを回避しなが
ら退職勧奨を進めることが可能です。
労務管理全般についてのご相談・お問合せ先
赤津社会保険労務士事務所
代表:赤津秀夫
〒640-8137 和歌山県和歌山市吹上3-1-39
TEL:073-425-6205
E-Mail:akatu-h@leaf.ocn.ne.jp