宿泊業における外国人労働者の労務管理について、社労士として助言すべき基本的なポイントをわかりやすく具体的にお伝えします。
1. 就労資格の確認と適正な雇用手続き
✅ 在留資格の確認
就労できる在留資格かどうかを入社前に必ず確認(例:技術・人文知識・国際業務、特定技能1号・2号など)。
在留カードの確認とコピーの保管(ただし、不正使用防止のため他人に貸与・コピー配布はNG)。
資格外活動許可が必要なケースもある(例:留学生がアルバイトする場合)。
✅ 雇用契約書の作成
労働条件通知書・雇用契約書を外国語(特に英語・母国語)で用意するのが望ましい。
労働条件(就業時間、賃金、休日、社会保険の加入状況など)を明確に説明。
✅ ハローワークへの届出
外国人雇用状況の届出(雇用時・離職時)を必ず行う(労働施策総合推進法に基づく義務)。
2. 労働時間・休日の適正管理
✅ 法定労働時間の遵守
1日8時間、1週40時間の原則を守る(宿泊業は特例で週44時間までOK)。
**変形労働時間制(1か月単位など)**の活用も選択肢に。
労働時間の適正管理(出退勤記録の明確化、システム活用)。
✅ 休日・休暇の適用
週1日以上の休日(可能なら連続した休日を確保)。
年次有給休暇の取得促進(特に外国人は「有給を取れる」と認識していないケースがある)。
✅ 残業・深夜労働の適正管理
36協定の締結・届出(時間外・休日労働が発生する場合)。
**深夜労働(22時~5時)**の割増賃金(基本給の25%以上増し)を徹底。
3. 賃金・社会保険の適用
✅ 最低賃金の遵守
地域別最低賃金以上を支払う(宿泊業は変動しやすいため注意)。
同一労働同一賃金(特定技能の外国人も適用対象)。
✅ 給与の支払い
原則として通貨払い(銀行振込が望ましい)。
可能であれば母国語対応の給与明細を用意。
✅ 社会保険・労働保険の適用
雇用保険・社会保険の適用要件を満たす場合は加入必須(例:週30時間以上の勤務で健康保険・厚生年金に加入)。
特定技能外国人は雇用保険加入必須(週20時間以上)。
労災保険は全員加入(アルバイトでも適用)。
4. コミュニケーションと職場環境整備
✅ 言語の壁を意識した対応
就業規則・マニュアル・指導内容を簡単な日本語や母国語で整備。
相談窓口の設置(外国人向け労務相談・日本語の補助ツール活用)。
✅ 文化の違いに配慮
宗教的な習慣や食事制限を考慮(例:ムスリムの礼拝スペース、ベジタリアン対応)。
生活支援(住居・生活情報の提供)も重要。
✅ ハラスメント対策
パワハラ・セクハラの防止(日本の職場文化との違いを説明)。
外国人への差別防止(国籍による待遇差がないよう配慮)。
5. 離職・解雇時の注意点
✅ 解雇の慎重な判断
解雇は最終手段(就労ビザに影響するため)。
懲戒解雇の基準を明確化(違反行為について事前に指導)。
✅ 離職時の届出と手続き
ハローワークへ外国人雇用状況の届出。
在留資格の変更・更新サポート(転職希望があれば適切な助言を)。
まとめ
宿泊業における外国人労働者の労務管理では、以下の5つのポイントを重視することが重要です。
1️⃣ 就労資格の確認と適正な雇用手続き(在留資格の確認・雇用契約の明確化)
2️⃣ 労働時間・休日の適正管理(変形労働時間制の活用・有給休暇取得の促進)
3️⃣ 賃金・社会保険の適用(最低賃金の遵守・社会保険の適用)
4️⃣ コミュニケーションと職場環境整備(言語の壁への配慮・ハラスメント防止)
5️⃣ 離職・解雇時の適切な対応(解雇の慎重な判断・転職支援)
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