赤津社会保険労務士事務所
お気軽にご相談ください。
 073-425-6205

受付時間 9:00-19:00 [土・日・祝日除く]


お役立ち記事

最高裁判例(退職金不支給)

労務管理

最高裁判例(退職金不支給)

2025年5月9日
◆ 事件の経緯(何が起こったのか)
登場人物: 京都市交通局のバス運転手(約29年勤務)。

問題行為:

勤務中に 運賃1000円を着服(千円札を手で受け取り、売上に計上せず自分のものにした)。

停車中のバス運転席で、計5回電子タバコを使用(バス内の喫煙は市のルールで禁止)。

市の対応:

懲戒免職とし、退職金(約1200万円)を全額不支給とした。

※バスに搭載されていたドライブレコーダーで行為が発覚。

◆ 裁判の流れと争点
裁判の段階 判断 主な理由
地裁(1審) 不明(記事に記載なし)
高裁(2審) 懲戒免職は有効、退職金全額不支給は違法 着服額は小さく、公務の信頼をそこまで損ねたとはいえず、全額不支給は厳しすぎると判断
最高裁(最終審) 懲戒免職も退職金全額不支給も適法 公金着服は重大な非違行為であり、29年の勤続などを考慮しても、全額不支給は妥当な範囲

◆ 最高裁のポイント
着服は「公金」の私的流用であり、金額の多寡にかかわらず「信頼を大きく損なう」行為。

市の退職金規程では、「どの程度支給しないか」は自治体の裁量(判断)に任されている。

市の判断は「社会常識から著しく外れている」とまでは言えず、裁量権の逸脱や乱用ではない。

◆ 類似の判断枠組み
過去の判例(2023年6月27日)では、飲酒運転をした教員に対する退職金1700万円全額不支給も最高裁が適法と判断。

今回のケースも、この考え方に従って判断された。

◆ 実務的な示唆(社労士・企業対応の観点)
公務員や公共性の高い職においては、「金額が少なくても公金の不正使用」は非常に重く見られる。

電子タバコなどの服務規律違反も、懲戒の重さを左右する材料になりうる。

退職金の不支給処分は、制度に「裁量の余地」があるか、処分が社会通念上妥当かが判断基準となる。

◆ 結論
この事件では、「金額の小ささ」や「長年の勤務実績」があっても、公金の着服という公務員としての根本的信頼を裏切る行為は、退職金全額不支給に値すると判断されました。
「信頼性の高さ」が求められる公共の職務では、些細に見える不正でも重く処分されることが明確に示された判例です。

労務管理についてのご相談・お問合せ先
赤津社会保険労務士事務所
代表:赤津秀夫
〒640-8137 和歌山県和歌山市吹上3-1-39
TEL:073-425-6205
E-Mail:akatu-h@leaf.ocn.ne.jp
就業規則に関するご相談・お悩み又はその他労務管理に関するお悩みごとは、和歌山で業歴18年(就業規則が 得意分野)の当事務所にご連絡・ご相談ください。まずは、「無料相談30分」ボタンまたは「お問い合わせ」ボタンをクリックしてみてください。