協同組合グローブ事件の概要と判決のポイント
事案の概要
被上告人(X)の経歴と業務内容:
Xは平成28年9月から平成30年10月31日まで、外国人技能実習生の監理団体であるY組合に雇用されていました。
Xの業務には、九州地方の実習実施者に対する月2回以上の訪問指導、技能実習生の送迎、生活指導、急なトラブルの際の通訳などが含まれていました。
Xは具体的なスケジュールを自分で管理し、直行直帰や所定の休憩時間とは異なる時間に休憩を取ることも許されていました。
労働時間の管理はタイムカードを使わず、月末に業務日報を提出し、その内容が確認されていました。
地裁判決のポイント
地裁判決(熊本地裁判決)の注目点:
地裁では、Xが訴訟提起の際に行った記者会見がY組合の名誉・信用を毀損したとして損害賠償が認められました。労働者側の記者会見が名誉棄損と認められるケースは珍しいため注目されました。
事業場外労働みなし制度に関する判断:
熊本地裁と福岡高裁はいずれも、Xの業務日報に基づいて、Xの労働時間の把握が可能であると判断しました。そのため、事業場外労働みなし制度は適用されないとしました。
最高裁判決のポイント
最高裁での判断内容:
最高裁は、Xの業務の多様性と、具体的な指示や報告が随時行われていなかった点を重視しました。
最高裁は、業務の性質や内容、遂行の態様、指示や報告の方法などを総合的に考慮し、Y組合がXの労働時間を具体的に把握することは容易ではなかったと判断しました。
このため、事業場外労働みなし制度が有効であると判断しました。
判決の意義
重要なポイント:
最高裁は、業務の性質や内容、指示や報告の方法などを総合的に考慮する基準を維持しつつ、各要素の実態を重視する判断を示しました。
指導員の業務が多様で流動的であり、相当の裁量が求められることを考慮した判断は重要です。
以上が協同組合グローブ事件の概要と判決のポイントです。この事件は、労働者の業務の性質や具体的な指示・報告の状況を詳細に検討することで、事業場外労働みなし制度の適用可否が判断されることを示した重要な事例です。